PPIHグループの経営基盤

取締役 兼 専務執行役員 CSO 兼 CFO 金融カンパニー準備室責任者 新谷 省二

戦略推進に向けた最適な資源配分

2020年にCSO 兼 CFO 金融カンパニー準備室責任者に就任した新谷でございます。銀行、コンサルティングファームを経て、エンターテインメント業界、飲食関連の企業において経営企画や新規事業に携わってきました。そうした経験を活かし、経営戦略の策定並びに戦略の確実な遂行に向けた財務・非財務資本の最適配分により、企業価値の向上に努めていきたいと考えています。
 さて、2020年6月期は、2019年10月に実施された消費税率引き上げによる個人消費の低迷に加え、記録的な大雨などの異常気象や2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大など、厳しい経営環境となりました。そのような中、当社では渡航制限に伴う免税販売高の蒸発といった想定外の環境の変化がありましたが、商品調達力を活かした必需品需要の取り込みなど「顧客最優先主義」を徹底していった結果、31期連続増収、営業増益を達成しました。2021年6月期は先行きに対する不透明な状態が続くことが想定されますが、32期連続増収、営業増益をめざします。

ESGプログラムの推進による企業価値の向上

当社は、2020年2月に公表した新中長期経営計画「Passion 2030」の中で、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)それぞれで将来的に企業価値に影響を与え得る6つのマテリアリティを抽出しています。具体的にはE:①事業活動で生じる環境負荷の低減、S:②人財・人権マネジメントの強化、③多様性を認容するダイバーシティの推進、④地域コミュニティとの対話強化、G:⑤経営の透明性を高めるコーポレートガバナンス体制の強化、⑥リスクマネジメントの強化です。これらESGに関する活動については、グループ全体の情報整理及び開示を行うとともに、従業員への啓蒙を推進する「プラットフォーム確立フェーズ」、ESGの取り組みの検証を行い、実績に応じた次期KPIの施策と設定を行う「イノベーション構築フェーズ」、取り組み結果の分析を行い次期戦略の立案、そして各ESG項目をさらに深化していくことでESG活動のリーディングカンパニーをめざす「ブラッシュアップ継続フェーズ」の3つのフェーズに分けて推進していきます。そしてこれらを戦略に着実に組み込みながら取り組みを進めていき、社会価値を創造しながら企業価値向上を実現していきたいと考えています。

ROE経営の徹底

また、2030年6月期を最終年度とする「Passion 2030」においては、顧客最優先主義の徹底と、国内売上高2兆円の盤石化並びに、海外売上高を1兆円に拡大することで売上高を2020年6月期の約1兆6,800億円から3兆円へと拡大していくことをめざしています。営業利益はオーガニック成長に加え、MD改革、コスト最適化及び金融事業等新規事業の育成を通じ、2020年6月期の約760億円から2,000億円へと拡大していく方針です。その達成に向け、CSO 兼 CFOとして経営戦略と一体化した財務戦略を推進していきます。また、ユニーグループの連結によりバランスシートが急膨張したことから、資産効率及びキャッシュ・フロー創出を高めて、適正水準にしていきます。特に資本効率の向上は重要な経営課題と認識しています。2020年6月期におけるROEは14.3%となりましたが、今後も資本コストを上回る高いROEの実現を通じた持続的な企業価値向上をめざしていきます。

PPIHグループのサステナビリティ

今後の事業投資に関しては、引き続きユニーをはじめ店舗フォーマットの再構築に加え、主力であるドン・キホーテの新規出店、新規事業の開発やデジタル化等に合わせて年間500億円程度を投じる計画です。内訳は約75%をリテール事業の拡大に投じ、約25%をIT投資等に充当する予定としています。高い売上高成長率、資本収益性を意識したポートフォリオ経営による最適な資源配分を徹底する考えです。同時にキャッシュコンバージョンサイクルの改善等による店舗の稼ぐ力の強化や、コスト構造の最適化等による店舗収益性の強化も怠りなく進めていきます。

バランスシートの最適化に向けて

こうした効率性を強く意識した投資に加え、資本効率の向上に向けたバランスシートの最適化を図っていく方針ですが、ネットD/Eレシオについては1倍以下に留めることを基本方針とし、財務規律を堅持していく方針です。
 株主の皆さまへの還元に関しては、引き続き「高リターンの本業投資」と「累進的配当政策(増配)」を基本方針としていきます。年間配当金は前期比50%増配となる1株につき15円を実施しました。増配は17期連続となり、配当性向は18.9%となりました。中期的には、連結配当性向は20%以上、長期的には30%程度をめざしていきます。
 今後も「顧客最優先主義」と「企業価値拡大」をめざしながら、EPSの長期的な成長に応じた配当水準の向上に努め、株主還元の充実を図っていきます。

年間配当金/連結配当性向/ROE

財務・非財務サマリー

財務・非財務サマリー
グループ従業員(正社員)男女内訳
新卒社員に占めるアルバイト出身者・外国籍従業員の割合
majica会員数/客単価/売上高構成比
オリジナル商品売上高/売上高構成比

コーポレート・ガバナンス

経営の透明性を高めるガバナンスの強化

PPIHグループは、企業原理である「顧客最優先主義」を徹底し、コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの強化を図るとともに、積極的なディスクロージャーを行い、社会と共生する当社への理解を深めていただくことが、企業価値増大のための重要な経営課題と位置づけています。高い倫理観に則った事業活動こそが、企業存続の前提条件であるとの理念に立ち、社内での早期対応体制を構築し、社外専門家の助言を仰ぎながら、企業統治体制とその運営の適法性を確保しています。
 とりわけコンプライアンスについては、組織体制を進化させるとともに、法令遵守意識の向上、経理部門及び内部監査部門、検査・調査部門の強化などの取り組みの徹底と充実を図りながら、企業活動を推進していきます。

コーポレート・ガバナンス体制図(2020年10月12日現在)
取締役会

当社は、取締役会を月1回以上開催し、企業価値向上に向けた当社の重要な経営戦略の策定などについて活発な議論を行っています。取締役会は17名で構成されており、株主の皆さまと同じ独立した視点と幅広い見識を取り入れるべく、社外取締役6名(うち5名は監査等委員)を選任しています。

取締役11名 監査等委員である取締役6名 社外取締役6名
監査等委員会

監査等委員会は、6名のうち5名が社外取締役で構成されており、取締役の職務の執行状況等についての監査を行い、必要に応じて会計監査人と連携を行うなど有効に監査が行われる体制になっています。また、監査等委員である社外取締役5名全員が独立役員として選任されているため、全社経営戦略の策定をはじめとする会社運営上の重要事項について、一般株主と利益相反の生じる恐れのない独立した立場で幅広い見識を取り入れることが可能であり、適切な経営判断が行われる体制になっています。

経営の透明性を高めるガバナンスの強化

社外取締役は経営に関する専門知識・経験等に基づき、社外の立場から経営に関する意見や指摘を行い、経営の健全性・透明性の向上等を期待して選任しています。社外取締役を選任するための独立性に関する基準や方針として明確に定めたものはありませんが、その選任に際しては、当社経営陣からの独立した立場で社外取締役としての職務を遂行できる十分な独立性が確保できることを前提に判断しています。

監査等委員である社外取締役(独立役員)の選任理由と取締役会/監査等委員会の出席状況

取締役会から経営陣への委任範囲

当社は、監査等委員会設置会社への移行に伴い、取締役会の決議による重要な業務執行の決定の全部または一部を、取締役に委任しています。
 さらに当社は、激変する外部環境に柔軟かつ迅速に対応するため、現場に対して大胆な権限委譲を行っていますが、職務権限規程において、取締役をはじめとする経営陣及び経営幹部に委任される事項を、その重要性や金額などによって明確に定めるなど、事業運営に関するガバナンスの充実に努めています。

取締役の職務執行

取締役の適正な職務執行を図るため、社外取締役を継続して選任し、取締役の職務執行の監督機能を向上させるとともに、社外取締役を含む監査等委員会が、取締役(監査等委員である取締役を除く)と独立した立場から、公正で透明性の確保された監査を徹底しています。
 さらに、取締役の職務執行が効率的に行われることを確保するために、取締役の職務分掌と権限を明確にし、組織体制に関する規程の見直しや整備を適時適切に行っています。経営環境の変化に応じて、組織・業務運営体制の見直しも柔軟に行います。
 また、取締役の職務執行に関する情報の保存及び管理については、株主総会議事録、取締役会議事録及び重要な会議の議事録、並びにこれらの関連資料を保存し、管理するための担当部署を置き、これらを10年間保存し、必要に応じて閲覧が可能な状態を維持しています。

現状のコーポレート・ガバナンス体制を選択している理由

当社は、2016年9月28日開催の第36期定時株主総会において定款の変更が決議され、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。監査等委員会を設置し、監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与することで、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンスの一層の充実及び企業価値の向上を図ることを目的としています。

取締役会の実効性評価

当社は、2016年9月28日開催の第36期定時株主総会において定款の変更が決議され、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。監査等委員会を設置し、監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与することで、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンスの一層の充実及び企業価値の向上を図ることを目的としています。

評価プロセス
2020年6月期の評価結果の概要

役員報酬制度

取締役(監査等委員である取締役を除く)の報酬については、株主総会の決議により承認された報酬総額の範囲内で、経営成績、財務状況及び経済情勢を考慮のうえ、取締役会で決定しています。また、監査等委員である取締役の報酬等については、株主総会の決議により承認された報酬総額の範囲内で、監査等委員の協議により決定しています。
 取締役(監査等委員である取締役を除く)の基本報酬は年額600百万円以内とし、基本報酬とは別枠の株式報酬型ストックオプションとしての報酬を年額400百万円以内、監査等委員である取締役の基本報酬は年額100百万円以内とそれぞれ株主総会で決議しています。

株式報酬型ストックオプション

当社は2014年9月から、役員退職慰労金制度を廃止するとともに、株価上昇によるメリットのみならず株価下落によるリスクまでも株主さまと共有し、取締役の中長期的な業績向上と企業価値向上に対する貢献意欲や士気を一層高めるため、取締役(監査等委員である取締役を除く)に対し、行使価格を1円とする株式報酬型ストックオプション制度を導入しています。

2020年6月期の役員報酬

コンプライアンス委員会の設置

弁護士及び社外取締役などの外部有識者を中心として、不正防止の立案、検査及び調査の計画立案・検証、他社不正事例の共有と検証などを行っています。社外弁護士を委員長とする「コンプライアンス委員会」は、取締役、執行役員、社外取締役(監査等委員)、複数名の社外弁護士で構成されています。
 さらに、業務の適正を確保するための整備として、コンプライアンス担当役員を任命し、コンプライアンス及び内部統制に関する事項を統括しています。また、コンプライアンス担当役員はコンプライアンス委員会と連携し、高い倫理観に則った事業活動を確保し、ガバナンス体制とその運営の適法性の確保に努めています。コンプライアンス担当役員とコンプライアンス委員会は、グループ会社も含めた組織横断的なコンプライアンス上のリスク分析と評価を実施し、リスクの最適化に対応しています。

コンプライアンス強化の取り組み

当社はコンプライアンス強化の取り組みの一環として、法令や社内ルール違反について、従業員及び取引先などの通報窓口である「コンプライアンスホットライン」を設置しています。また、従業員とその家族の心とからだ、暮らしに関する悩みの解決を図るため、「なんでもあんしん相談窓口」を設置しています。これらは社内規程に基づいて運用し、公正な取引と安全で安心な商品・サービスの提供につなげています。

内部通報制度

リスクマネジメント

新型コロナウイルス感染症への対応

国内及び海外の新型コロナウイルス感染症拡大への迅速な対応を行うため、2020年3月6日に新型コロナウイルス緊急対策本部を開設し、情報の集約や社内発信、労働環境の整備やルールづくりなどを進めてきました。 店舗では、飛沫対策のビニールシートや消毒液の設置、買い物カゴの除菌などの感染防止対策を徹底するとともに、お客さまにマスクの着用や、間隔を空けてレジにお並びいただくことへのご協力を呼びかけています。また、店舗事務所や休憩室においても、アクリル板やビニールシートを設置し、安心して業務を行える環境整備に努めています。

新型コロナウイルス感染症への対応

品質管理体制の構築

品質管理体制の構築

お客さまにお届けする商品の安全性を確保するために、品質管理体制の整備を進めています。品質管理部門では国際的に推奨される食品衛生管理手法である「HACCP(ハサップ)」の考え方を生鮮作業場の衛生管理にいち早く取り入れました。これは店内で製造販売する生鮮商品の安全性のさらなる向上につながっています。衛生管理計画書「HACCP統括表」と実行ツール「一般的衛生管理プログラム日報」を活用することにより、作業室入室前や作業室内で、食中毒や異物混入の発生を未然に防ぐ衛生管理を実践しています。 生鮮部門の従業員に対しては、HACCPマニュアルの配布やWEBテスト、講習会による知識習得教育を実施。2020年11月からは、店舗従業員の作業負担軽減・帳票記録の精度向上・本部支援業務の効率化を目的に、自社開発の「記録帳票保管のクラウド管理システム」を稼働し、iPadによる管理体制を整えています。

情報セキュリティへの取り組み

PPIHは、店舗運営を支える基幹システムや、人事給与・会計などの情報システムの運用において、2013年にITサービスマネジメントの国際規格「ISO20000」を取得し、グループ内基幹業務の一層の安定を通して、ITサービスをはじめとする内部統制の充実を図っています。
 また、当社グループの日本商業施設は、主にテナント賃貸事業を通じてステークホルダーの重要な情報を取り扱う企業として、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格「ISO27001」を取得しています。同社では「情報セキュリティ10か条」を定め、年に4回遵守状況のチェックを行っているほか、情報管理に関するWEBテストを毎月実施するなど、情報セキュリティルール遵守のための継続的な取り組みを行っています。

情報管理に関するWEBテスト

事業等のリスク(抜粋)

事業等のリスク(抜粋)
iconその他のリスクについては、下記ページをご参照ください。
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